ニッキン抄 2019.1.18
ある高層ビルの一室。自らを歴史上の人物と思い込む人や、訳もなく罪悪感に悩む人らが連日訪れる。エフ博士は人間のあらゆる妄想を預かり、必要な人に売る――。SF作家・星新一が「妄想銀行」で描いたファンタジーの世界だ▼半世紀ほど前の小説だが、現代を予知していたのか。バーチャルならぬリアルな個人データを仲介する「情報銀行」が近く動きだす。購買履歴や健康情報などを預かり、希望する企業に提供する仕組み。金融界でも実証実験が進む▼デジタル時代ならではのサービスが期待される一方、提供先の情報漏えいも懸念される。総務省によると消費者の8割がパーソナルデータ提供を不安視。利用拡大へ万全のセキュリティー対策は言うまでもない▼くだんのエフ博士は、彼を思う女性の妄想を別の好みの女性に飲ますはずが、違うカプセルを渡してしまい痛い目に遭うというオチが。データはくれぐれも“取扱注意”とのメッセージだろうか。2019.1.18
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