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社説 疑問点多い限度額引き上げ

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 郵政民営化委員会は2018年12月26日、ゆうちょ銀行の預入限度額を現状の2倍に拡大すべきとの意見書をまとめた。通常貯金・定期性貯金合計で1300万円とされている限度額を、それぞれ1300万円に引き上げるように求めたもので、政府は4月にも実施する。過去にも2倍以上引き上げられたことはあるが、引き上げ額は最大。民間金融機関の反対意見や金融庁の懸念は、自民党に押し切られた感が強い。限度額拡大が、ゆうちょ銀の収益性改善や民営化進展に結びつくとも考えにくく、疑問点は多い。
 郵政グループは15年に3社が上場したが、日本郵政株は過半を政府が保有。その日本郵政は、ゆうちょ銀株式の8割超を保有している。株式売却が進展しない状況下での限度額倍増は時期尚早だ。また、超低金利下での貯金増加は資金運用収益に依存するゆうちょ銀の収益性を低下させる恐れがある。ひいては、株式市場の評価を高めることを難しくし、株式売却を進めにくくする矛盾を起こしかねない。
 今回、民営化委は限度額が利用者の利便性を阻害している点を引き上げの理由とした。16年4月の限度額拡大でいったん9千人まで減った超過者は、18年9月では3万3千人に増えている。それに対応する郵政グループの事務負担や利用者の不便が生じている実態はある。
 しかし、一律に限度額の緩和で対処するのは競争関係にある民間金融界の納得は得られない。ユニバーサルサービス確保と整合性がとれないとして見送られた過疎地や高齢者に限定する選択肢も真剣に検討されるべきだ。民間金融機関がない地域に限定するなども考えられる。
 貯金奨励金廃止など過度な貯金獲得に歯止めをかける策も盛り込まれており、郵政グループは忠実な対応が求められる。貯金獲得に走れば、ゆうちょ銀が目指す地域金融機関と協力し、地域に資金を還流させるビジネスモデルの実現も難しくなる。また、民営化の進捗状況を点検する役割を負う民営化委には、完全民営化実現へ中立的立場の意見を求めたい。限度額拡大ありきでは存在意義をなくす。2019.1.18


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