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社説 マイナス金利の弊害直視せよ

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 日本銀行がデフレ脱却に向け、異例の「マイナス金利政策」を導入してから2月で3年が経過する。だが、2%の物価安定目標の達成は依然遠く、長期に及ぶ異次元の超金融緩和が金融機関収益を圧迫し続けている。市場関係者らの間では、もはや「副作用」でなく「弊害」との見方が多い。このままでは金融機関の経営そのものに深刻なダメージを与えかねない。日銀は早期に解除へ向けた検討を始めるべきだ。
 黒田東彦総裁が2013年4月に始めた「量的・質的金融緩和」から約6年。株価や企業業績には一定の効果をあげたが、政府と共同声明を出した2%の物価目標の達成時期は6回も先送り。本来、短期で終えるはずの異次元緩和という“劇薬”の長期使用で金融機関への悪影響が顕在化している。特に大きいのが日銀当座預金へのマイナス金利適用と長期金利のゼロ%誘導による市場金利低下だ。
 17年度は地域銀行106行の過半数で本業利益が赤字、うち52行が連続赤字に陥った。人口減や企業の資金需要低迷に超低金利が追い打ちをかけている。みずほ総合研究所はマイナス金利が続くと「地域銀の実質業務純益は23年度以降、15年度比で半減する」と試算。経営体力の低下に拍車がかかるとみる。
 運用難から地域金融機関では過度なリスクテイクが課題に浮上。地域銀は投資信託保有が大手行を上回る11兆円に急拡大し、信用力の低いミドルリスク企業貸出も増加。市場変動による損失や景気後退時の焦げ付きリスクが危惧される。
 19年も日銀が政策修正できる余地は乏しい。国内では二つの選挙と10月の消費増税を控え、生活コストを下げる政策が相次ぎ物価上昇は見込めない。世界経済も不確実性を増すなかでの修正は難しい。だが、次の景気失速局面に備え、今から微調整する議論は必要であろう。
 その際はまず、マイナス金利が地域経済を支える金融機関を疲弊させ、金融仲介機能を弱めている現実を直視すべきだ。市場との対話に気を配り、金融機関経営の「持続性」に配慮した政策運営への転換を望む。2019.1.25


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