社説 新銀行つくる覚悟で出直しを
スルガ銀行のシェアハウス関連融資を調査してきた第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)は9月7日、借り手の預金残高改ざんなどの不正が組織的に行われたと認定した。過度な営業ノルマを課され、上司から恫(どう)喝(かつ)されたことで不正に手を染めた行員もいた。厳しい収益環境下で高い収益をあげてきた同行のビジネスモデルは明らかにまやかしだった。地に落ちた信用は容易には戻らないだろう。新経営陣は、新しい銀行をつくる覚悟で、しっかり規律が働く組織へ作り替えなければならない。
中村委員長は「経営層に幾層にも情報の断絶があり、現場の問題が分からない仕組みだった。それにより(経営陣は)自分たちの身を守っていた」とガバナンスの欠如を指摘。経営陣が主観的に利益拡大の意図をもって、こうした仕組みを構築したとまではしなかったが、「客観的にそう評価されてもやむを得ない状況」にあった。創業家出身の岡野光喜会長を含む役付取締役5人の引責辞任は当然だ。
第三者委は、こうした組織を実質的に作り上げたのは岡野会長の実弟で2016年7月に急逝した故岡野喜之助副社長とした。法的責任を追及されかねない創業家の関係企業に対する不透明な融資も取りざたされている。資本関係もある創業家支配がまかり通っていたことは明らかだ。新経営陣が創業家と決別する道筋を明確にしなければ、再建は到底望めない。
また、行き過ぎた収益至上主義の結果、審査部門が営業部門の言いなりになっていた実態も浮かび上がった。「数字ができないならビルから飛び降りろ」と上司が部下を恫喝するなどパワハラが横行。シェアハウス融資では有担保で実行したら、無担保ローンもという指示まであった。自らの利益優先だったことは疑いようがない。
ただ、個人に特化したスルガ銀がITを使った先進的サービスなどで利用者から評価を得ていたことは事実だ。どこで歯車が狂ったのか検証し、出直すしかない。また、現在も検査を続ける金融庁には全容を解明し、厳正な処分を求めたい。不埒(ふらち)な経営を許した責任の一端はある。2018.9.14
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