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社説 増税意義失うバラまき対策

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 安倍首相が、10月15日の臨時閣議で2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げることを改めて表明した。社会保障費増大など日本の財政事情を考えれば実行するのは当然だ。首相は同時に増税による消費の反動減対策を指示した。一定の対策は必要だろうが、効果を慎重に見極めて実施してもらいたい。バラまき的な施策が増えれば消費増税の意義を失う。
 増税を歓迎する国民はいない。しかし、先進国のなかでも突出して多い公的債務や高齢化により増大する社会保障費に対応するには、避けて通れない。過去二度延期しており、これ以上の先送りは国際的な信認に影響する。金融市場の混乱要因になる可能性も否定できず、首相が覚悟を示したことは評価できる。
 ただ、反動減対策には注意が必要だ。足元で取りざたされる中小小売店向けのポイント還元策にしても、どこまで効果があるかは不透明だ。商店街に代表される中小小売店のキャッシュレス化を進め、活性化すると言えば聞こえはいいが、商店街衰退の主因は人口減少と大型店にある。現金以外での決済手段を増やしても容易に客足が増えるとは考えにくい。
 ポイント還元策に限らず期間限定の施策では、期限到来による反動減はいずれ避けられない。目先の影響回避だけにとらわれず、増税しても安定的な成長を可能にする視点で政策を検討・実施すべきだ。
 金融機関は増税による一時的な消費の落ち込み、取引先の売り上げ停滞を見据えてどう克服していくかを一緒に考えたい。税負担の増加は取引先の経費増を招き、経営圧迫要因にもなる。取引先の持続的成長につながる適切なコンサルティング機能発揮が期待される。
 金融機関自身も収益環境が厳しいなかで、少なからず経費が増加する。改めて経費を点検してみる必要はあろう。前回増税時には、グループ会社間の消費税負担軽減へ子会社や関連会社の業務を本体に取り込む動きもあった。住宅ローンの駆け込み需要なども想定されるが、前のめりになり、顧客本位が疎(おろそ)かにならないよう注意が必要だ。2018.10.26


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