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社説 市場機能の確保を万全に

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 東京証券取引所は10月23日、10月9日に株式売買システムで発生した障害の経緯を金融庁に報告すると同時に、宮原幸一郎社長らの処分を明らかにした。東証の言葉通り、優先すべき使命である市場機能の確保がままならなかった責任は重い。証券会社など市場参加者とも連携し、システム全般を急ぎ総点検する必要がある。
 今回のトラブルの直接的原因は9日7時31分にメリルリンチ日本証券から、売買システム「arrowhead(アローヘッド)」に大量の通信電文が送信されたことにある。その影響で1~4号機まである接続装置の1号機に接続する仮想サーバーが使用できなくなった。
 こうした事態に備え、残る接続装置に接続する仮想サーバーで発注経路を確保する体制を敷いており、当日も東証は証券会社に、これを利用するように依頼。しかし、一部の証券会社が、対応に時間を要したり、対応できなかったため、投資家にも影響が及ぶ事態となった。
 大量データ受信に対し、東証のシステムは高負荷を検知し、安全機構も正常に作動したが、せっかく用意されていたトラブルの際の備えが有効に機能しなかったことが大きな問題だ。東証と証券会社間の接続テストなど訓練が不十分だったことは否めず、証券会社にも責任の一端はある。また、直接の原因となったデータ誤送信について、その原因を究明し、他の証券会社で同様の問題が起きないようにしなければならない。
 2010年に稼働したarrowheadは現在、0.5ミリ秒未満の速さで注文に応じることができ、コンピューターが自動的に売買する高速取引が増加。以前に比べ格段にシステム安定運用の重要性が高まっている。システムトラブルで大量の注文が処理できない事態が相次げば、市場の信頼が揺らぐ。
 証券取引所は金融資本市場の中核をなす公共的インフラだ。とりわけ東証の存在は大きい。世界の市場と伍(ご)し、東京市場の国際化を進めていくうえでも大きな役割と責任を担っていることを踏まえて再発防止へ取り組んでもらいたい。2018.11.2


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