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社説 政府の責任重い革新投資機構問題

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 産業革新機構(INCJ)を改組し、9月に発足したばかりの産業革新投資機構(JIC)が迷走している。所管する経済産業省と経営陣の相互不信が募り、田中正明社長をはじめ代表取締役4人と社外取締役5人の民間出身取締役全員が12月10日、辞意を表明する異例の事態になった。政府内での意見調整が不十分だった結果だ。こうした事態を招いた政府・経産省の責任は重い。官民ファンドのあり方を改めて検討すべきだ。
 発端は経営陣の報酬問題だ。経産省は9月21日に書面で報酬内容を示し、これに基づきJICが取締役会で決議したにもかかわらず、その後、経産省側が白紙撤回したことで亀裂が決定的になった。いったん、書面で提示しておきながら、一方的に撤回されたらハシゴを外されたようなものだ。経営陣が経産省を信用できなくなったのも当然だ。また、白紙撤回に至った背景には経産省と財務省の間の意思疎通不足があり、経産省に手落ちがあったことは否めない。
 こうした経産省のちぐはぐな対応が重なったことで、民間出身取締役らが、「最終受益者(国民)本位の投資活動を通じ、産業競争力強化と未来の産業育成に寄与する」という機構のミッションを果たせなくなるという疑念を募らせたこともうなずける。
 一連のゴタゴタで事実上、JICの新規事業は休止に追い込まれる。米国に設立したファンドも清算される見通しだ。JICの信用や評判も傷ついており、民間資金の呼び込みやプロフェッショナル人材採用に影響がないとは言い切れず、再スタートの道は険しい。
 そもそも何のために法律を改正し、JICを設立したのか根本から問われる。本来、官民ファンドは民間の知恵を活用し、効率的な産業振興、新産業創出を行う存在のはずだ。これまでの経緯をみる限り、政府の言いなりになるファンドを温存するのが目的だったのかと疑われても仕方ない。政府、経産省は速やかに今回の事態収拾を図ると同時に、日本経済・国民の役に立つ官民ファンドのあり方を再検討すべきだ。2018.12.14


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