社説、未来につながる働き方改革を
企業に労働慣行の抜本的な見直しを迫る「働き方改革関連法」が4月から順次、施行される。金融機関でも残業時間の削減など、働く環境を改善する動きは進んでいる。だが、単なる業務効率化といった法対応では従業員のモチベーションを下げかねない。長引く低金利政策や異業種参入など逆風に立ち向かうためにも法施行を前向きに捉え、イノベーションを生みやすい働き方にシフトすることが肝要だ。経営者と従業員が一体で、未来につながる働き方改革の実現に向けた議論を深めてほしい。
金融機関で労働生産性を高める動きは着実に広がっている。NTTデータ経営研究所の2018年調査では働き方改革に取り組む企業の割合は全体で38.9%に対し、金融・保険業は57.7%でトップ。時間意識の浸透が進んでいる表れだ。
一方、営業現場からは早帰りなど残業削減が優先されることで“しわ寄せ”を招いているとの声も聞かれる。短時間で成果を出すことだけを求めては従業員の働きがいを低下させてしまう。一律的な施策に陥っていないか点検すべきだろう。
総労働時間の短縮には、RPA(ロボットによる業務自動化)や人工知能(AI)技術によるデジタル化などで既存業務の効率化を進める必要がある。ただ、それにとどまらず、従業員の創意工夫を引き出せる働き方が求められよう。例えば、働きがいを阻害している可能性のある人事慣行の見直し。最近では旧来型の「総合職と一般職」という区分を見直す動きもある。職種の垣根を取り払うことで、幅広く活躍できる環境が整う。
多様な人材が活躍できる場を広げる取り組みも期待される。労働力人口の減少も見据え、女性はもちろん、シニアの活用も欠かせない。長年培ってきた豊富な知識やノウハウ、人脈を生かさない手はない。また若手の成長を後押しする人材育成にも一段と力を注いでほしい。
こうした施策の浸透・定着には、現場の従業員と経営が一緒に作り上げていくことが大切。鍵を握るのはトップが働き方改革を前に進める明確なメッセージを発信していくことだ。2019.3.29
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