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社説 後見預金、銀行界も前向きに

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 ようやく銀行界に、後見制度支援預金を取り扱う動きが広がりだした。3メガバンクが5月以降開始、地域銀行も4行が新たに始めた。手間がかかるうえ、収益につながる商品ではないが、金融界には高齢化社会を支える社会的役割が期待されている。後見支援預金は、認知症高齢者の財産を守る有効な手段の一つだ。未取扱銀行も前向きに検討してもらいたい。
 後見制度支援預金は、認知症高齢者の財産管理を託された後見人の不正が相次いだことを受け、政府が金融界に簡便な方法で預金の保護と日常生活費の管理ができる商品の創設を求めたことが誕生のきっかけだ。2017年に静岡県内の信用金庫が足並みをそろえて開始。以降、協同組織金融機関では急速に取り扱いが広がった。
 一方、銀行界では18年度までの取り扱いは静岡中央銀行と十六銀行にとどまり、スタンスの違いは歴然としていた。家庭裁判所ごとに、払い出しに必要な指示書様式が異なることなどが躊躇(ちゅうちょ)する一因になっていたが、最高裁判所が18年12月に統一書式の指示書を作成。障壁の一つは解消されており、考え方を変えてもらいたい。静岡県内信金では19年3月末までに444口座、106億円の取り扱い実績があり、ニーズが存在していることは明らかだ。
 超高齢化社会の到来で、従来の枠を超えた金融の役割が求められる。高齢期の顧客に対する金融サービスのあり方は、金融審議会の市場ワーキング・グループが6月にまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」も参考になる。報告書で示されている認知能力が衰えた後でもできる限り、それ以前と同様に金融サービスを享受できる環境整備は欠かせない。
 25年には65歳以上の5人に1人が認知症になるとの推計もある。後見制度支援預金の取り扱いや周知だけにとどまらず、認知能力の衰えを想定し、事前の備えを促していく重要性が高まる。また、金融審の報告書が指摘しているように業界の垣根を越え、非金融とも連携した総合的なサービス提供を考えていく必要もあろう。2019.8.2


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