社説 気候変動対応を加速させよ
金融機関に気候変動対応を促す動きが国内外で活発化している。9月に国連環境計画・金融イニシアティブの責任銀行原則が発足。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」と整合的な事業戦略策定などを働きかけている。国内では官民でつくるTCFDコンソーシアムが10月8日、投資家が企業の気候変動対応力を評価する際のグリーン投資ガイダンスを公表した。地球温暖化の影響は広範囲に及ぶ。金融機関は、気候変動リスクに関する積極的な情報開示と、投融資行動を通じた取引先の環境負荷低減に努めてもらいたい。
金融安定理事会が設置した民間主導の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年6月にまとめた情報開示に関する提言には、2年余りで900に迫る世界の企業・機関が賛同を表明した。
日本では10月10日時点で199社・機関が賛同。うち金融部門は45社あるが、地域銀行は滋賀銀行と、九州フィナンシャルグループにとどまる。賛同を表明しないまでも、気候変動対応に対する経営の考え方を発信していくことは重要だ。金融機関が率先して行うことで、波及効果も期待できる。
投融資行動も変えていく必要がある。メガバンクグループは石炭火力発電所など、地球環境に悪影響を及ぼす与信を行わない旨をクレジットポリシーに掲げ、再生可能エネルギー向けファイナンスを積極化している。責任銀行原則にも参加した。
群馬銀行は11月に地域銀で初めてグリーンボンドを発行。調達資金をエネルギー効率改善につながる設備資金などの融資に充てる。他の金融機関でも環境配慮型金融商品は増えており、こうした流れを加速させたい。
三井住友銀行は国内の水災を対象にシナリオ分析し、2050年までの与信関係費用増加額を300億~400億円と試算する。単年度平均では10億円程度で、財務への影響は限定的と言える。ただ、今般の台風にみられるように自然災害は激甚化の傾向がみられる。金融機関は地域や取引先を巻き込み、社会全体の気候変動対応が前進するように取り組んでもらいたい。2019.11.1
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