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社説 従業員守るパワハラ対策急げ

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 職場のパワーハラスメント(パワハラ)防止策が2020年6月から企業に法律で義務付けられる。パワハラの被害相談は年々増え続けており、法制化は働く人の尊厳を守るための大きな一歩だ。ただ、具体的な該当事例などを盛り込んだ厚生労働省の指針案は企業側に恣意(しい)的な解釈の余地を残した。各金融機関も就業規則の改定など態勢整備が急がれるが、あくまでも従業員サイドに立ったパワハラ対策を進めるべきだ。
 厚労省の18年度調査によると職場の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は8万件超と過去最高となった。パワハラは相談内容別でも25%と7年連続トップ。金融界も不祥事の裏でパワハラが常態化していた事例があったほか、転職理由にハラスメントを挙げるケースは多い。
 各金融機関では相談窓口を設置している。だが、法令上の定めがあるセクハラ対策と比べて取り組みが遅れていたのは否めない。今回、パワハラ禁止の規定策定や研修の実施などが義務化される。罰則規定はないが、対応や社内への周知が不十分だと訴訟につながる恐れもある。態勢整備に万全を期さなくてはいけない。
 一方、厚労省の指針案について労働側からは不安視する声も広がる。パワハラの六つの行為類型の該当例が不適切で、あいまいな解釈が可能になることを危惧。企業がパワハラに過剰反応する必要はないが、指針の柔軟な運用は求められよう。被害者の声を拾いやすくするために、社内通報制度の使い勝手をよくする工夫も欠かせない。
 営業現場への過度な業績目標もパワハラを生む温床となる。金融労組上部団体は従業員の離職について「ノルマや業績至上主義が大きな一因」と指摘。業績管理手法の見直しは言うまでもない。またパワハラは長時間労働と同時に起きるケースが多く、生産性の向上やシニアなど働き手を増やすといった働き方改革の実現も課題となる。
 法制化はパワハラ排除へのきっかけに過ぎない。経営トップはもちろん労組も問題を解決する姿勢を強め、組織全体に人権意識を浸透させてほしい。2019.11.29


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