社説 新入社員を大事に育てよう
4月から金融界に多くの新入社員が入ってくる。本来なら期待に胸を膨らませた若者を晴れの舞台で迎えるところだが、コロナショックの影響で入社式や集合研修の中止・延期が相次いでいる。例年のような受け入れができないのはやむを得ないが、異例の事態に不安を抱く新人のフォローには十分気を配ってほしい。経営環境が厳しい金融界は就職人気が低下している。採用難のなかで獲得した貴重な人材を大事に育てたい。
就職情報のディスコが今春就職する学生に3月、緊急調査したところ、7割が「新生活に不安を感じる」と回答。入社式や研修がなくなることで「社会人としての気持ちの切り替えができるか」「仕事について行けるか」を不安視する声が目立った。このため、各金融機関は経営理念の浸透や知識習得などをフォローする体制が従来以上に重要となってくる。
入社式や合同研修を中止・短縮する金融機関ではウェブの活用で代替するケースも多い。今回のような局面に対応する新しい手法として活用は広がるだろう。ただ、対面でこそ味わえる同期らとの一体感や研修担当者との接点が薄れることで新入社員が孤立しかねない。きめ細かなアドバイスが必要だ。
新入社員を受け入れる職場は相談しやすい環境づくりが欠かせない。だが、十分な事前知識がないまま配属された場合、現場の負担は増す。特に指導担当者は通常業務にOJT業務が加わる。任せきりにせず、職場全体で育てる姿勢が求められる。
厚生労働省によると新卒で入った社員の約3割が3年以内に離職している。過度な目標設定などパワーハラスメントをなくすのはもちろんだが、最近は働き方やキャリアへの考え方が変化している点も踏まえたい。
今春の新入社員は1996年以降生まれの「Z世代」。転職に対する抵抗感は薄く、仕事には「自らの成長」を求める傾向がより強いとされる。こうした新しい価値観を持つことを理解するためにも一対一で深く対話する「1on1ミーティング」などに力を入れ、離職防止につなげてほしい。2020.3.27
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