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社説 持続可能性問う地域銀行決算

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 地域銀行の2019年度決算は、二つの大きな課題を映し出している。一つは以前から指摘されている持続可能なビジネスモデルの構築だ。さまざまな取り組みが行われているものの、数字に表れるまでには至っていない。もう一つは足元のコロナ禍への対応だ。各行が予防的に引き当てを積んだ結果、与信コストは大幅に増えた。期待されるのは今後の事業者支援だ。廃業や倒産の増加は、地域経済を疲弊させ、回復も遅らせる。
 5月20日までに決算発表を終えた地方銀行62行を集計したところ、貸出金利息収入は0.8%増えたものの、貸出金利回りの低下は続いている。各行が力を入れる役務取引等利益は横ばい。基礎的収益力を示すコア業務純益は前年度比3.5%減少した。
 世界的な超低金利の継続は避けられない情勢だけに、コンサルティング業務強化など、非金利収益強化の手を緩めることはできない。
 与信コストは、特殊要因で前年度に大幅に引当金を積み増したスルガ銀行を除いて比較すると、地方銀行・第二地方銀行合わせて約7割増えた。積み増しは現下のコロナ禍を考えれば当然だ。取引先を正常化に導けば、引当金は戻り益となるだけに、20年度以降は支援の巧拙が利益にでる。
 ただ、観光関連産業などの支援は容易ではない。インバウンド需要の早急な回復は期待しにくい。地方創生のグランドデザインを描き直す必要もあろう。海外取引も、すぐ元通りになるとは考えにくい。長期戦に備え、出資機能を用いた支援も検討すべきだ。
 コロナ禍で、事業承継M&A(合併・買収)の増加が予想されるほか、融資取引のなかった事業者の相談も増えている。できる限り事業者に寄り添い、課題解決を通じ新たなリレーションを構築していくことは、自らの持続可能性を高めることになるはずだ。2020.5.29


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