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社説 市場運営の安定化に責任を

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 東京証券取引所で10月1日にシステム障害が発生し、終日にわたって取引が停止した。株式全銘柄の売買の終日ストップは前例がない。資本市場の根幹を揺るがす、あってはならない異常事態となった。投資家や市場参加者の混乱を招いただけでなく、政府が掲げるアジアの国際金融センター構想にも水を差した。徹底した原因究明と再発防止に努め、市場運営の安定化に責任を果たしてほしい。
 今回の障害は東証の高速取引システム「アローヘッド」で、銘柄名などの情報を格納するディスク内のメモリー故障がきっかけ。本来は自動でバックアップ用に切り替わるはずが、設定ミスで同機能が作動しなかったことが判明。日本取引所グループが設けた調査委員会で根本原因の追究が急がれる。
 リスク管理体制の強化など再発防止策も求められる。仮に障害が起きても取引を続けられるよう複数の取引システムを用意しておくなど非常時の備えに万全を期す必要がある。約3700社が上場し、株式時価総額で6兆ドルと世界3位を誇る市場の重要インフラとして、BCP(業務継続計画)の見直しが不可欠だ。
 東証は近年、企業統治改革や市場区分を4市場から3市場に再編するなどの取り組みを進め、海外から日本への投資マネー呼び込みに力を入れてきた。今回と同じような混乱を再び起こせば、せっかく高めてきた投資家からの信用を失いかねないことを肝に銘じてほしい。
 一方、システムのトラブルを100%無くすことは難しいことも指摘される。コロナ禍を契機にデジタル変革を加速している金融界も「想定外」への危機対応力を高める必要があろう。東証が起こした今回の事態を対岸の火事とせず、複雑化するシステムに内在するあらゆるリスクを再認識する契機にしたい。2020.10.9


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