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社説 再編ありきの運用

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 政府と日本銀行が、地域金融機関の経営基盤強化を促すため、それぞれ異例の措置を打ち出している。経費削減や経営統合・合併にインセンティブをつける内容だが、対話をベースに利用を促していくべきだ。再編ありきの運用では、金融機関の持続可能性は高められない。
 日銀は経営統合や経費削減を進める地域銀行と信用金庫に対し、日銀当座預金に年0.1%金利を上乗せする特別当座預金制度を導入する。政府も預金保険機構の利益剰余金で、合併・統合する地域金融機関の費用を一部補助する新制度を創設する。日銀の新制度は3年間、政府案も時限措置になる見通しだ。
 コロナ禍で地域経済の縮小に拍車がかかる可能性があり、先手を打って地域金融機関の経営強化を促す狙いは理解できる。ただ、菅義偉首相の地域銀再編発言があっただけに、合併・統合を迫る制度と受けとられかねない。日銀・政府が同じタイミングで出してきたことで、なおさらだ。実績づくりのため“押し売り”すれば、ビジョンに欠ける統合を生み出す懸念がある。
 日銀の新制度は、OHR(経費率)を3年間で4%以上改善するか、合併・統合が主な条件だ。既に経費率が低い銀行にはOHR条件のハードルは高いが、経費削減の動機付けになるとの受け止めは多い。統合条件は、統合コストの発生で、OHR条件のクリアが難しくなる金融機関の救済と見ることもできよう。真意は今後の運用に表れる。
 金融機関の経営安定化は、地域経済を支えるうえで欠かせない。その意味で新制度の意義はある。だが、長期化するマイナス金利政策が、金融機関の体力を奪っていることは否定できない。また、不動産仲介など、規制で金融機関の地域活性化への活動が制限されている部分もあり、多面的な環境整備が必要だ。2020.11.20


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