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社説 大手行は新たな収益基盤築け

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 大手行の2021年3月期決算はコロナ禍にあって、5グループ合計の当期純利益が増益となった。与信関連費用が計画内に収まったことや、企業の資金繰り支援などが寄与したためで業績は堅調に見える。ただコロナの収束は見通せず、今後も与信先の業況悪化が収益を圧迫する懸念は続く。店舗の効率化など構造改革を急ぐとともに新たな収益基盤を築き、安定成長につなげてもらいたい。
 コロナ対応に伴う融資増は資金利益を押し上げ、3メガバンクグループは6年ぶりに全社が前年同期比増加した。手数料も海外での起債ニーズなどで伸びたが、こうした利益貢献はコロナ影響による一過性の要因が大きい。将来の成長につながる安定収益源を増やす必要があろう。
 対応が急がれる分野の一つが顧客接点の再構築。大手行は店舗統廃合や人員を抑えた機能特化店への移行を進めている。コスト削減による生産性向上は重要だが、大事なことは顧客にどう利便性を感じてもらい、決済や資産形成など取引深耕につなげられるかだ。対面とネットとの最適な融合も含め、チャネル戦略の真価が試されている。
 異業種連携による非金融領域も課題だ。電通グループと広告事業の新会社を設立する三井住友フィナンシャルグループ(FG)は「情報産業化という今後進むべきビジネスの一つ」(太田純社長)と見据える。三菱UFJ銀行はNTTドコモと協業し「新しい形の金融デジタルプラットフォーム」(亀澤宏規・三菱UFJFG社長)としてデータ事業を模索。各社による収益貢献化に期待したい。
 金融界は変革期の社会課題にいかに向き合い、規制緩和を生かしたビジネスモデルを作り上げるかが問われている。先行する大手行の取り組みは、その進むべき方向性を探るうえでの試金石となる。2021.5.28


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