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社説 公的資金活用の「重み」

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 じもとホールディングスと傘下のきらやか銀行は5月13日、金融機能強化法に基づいて、公的資金の活用を金融庁に申請する検討を始めたと発表した。2020年8月の同法改正で新設された「新型コロナウイルス特例」の適用第1号となる見通しだ。
 同法は、金融不安を未然に防ぐセーフティーネット(安全網)として定着した観がある。05年4月のペイオフ全面解禁に備え、04年8月に制定された時限立法で、08年3月末に期限切れを迎えた。だが、同年秋のリーマン・ショックを機に復活。東日本大震災や今回のコロナ危機などに対応し、延長を繰り返してきた。
 金融庁幹部は口には出さないが、今後も延長措置を重ねて半ば恒久化したいのが本音だろう。預金保険法に基づく公的資金投入も可能だが、金融機能強化法は破綻前に予防的に資本を増強できる使いやすさがある。同法の目的は金融機関の救済ではなく、中小企業の経営支援や地域経済の活力維持にあり、“二重の安全網”の存続は金融機関にとって大きな意味を持つ。
 ただ預金を扱う地域金融機関を特別扱いする法律だけに国民負担が生じれば世論や政界の反発は必至だ。危機対応とはいえ、コロナ特例を利用すれば国から経営責任や収益目標を求められることなく、無期限で資本を調達できる。
 安定的な収益で自己資本を積み上げ公的資金を返済するのが理想だが、超低金利や人口減少が続く環境下では新たな資本の出し手を探すのも一案だろう。それが昨今の再編加速の一因にもなっている。
 きらやか銀は過去に二度、同法を利用しており、今回は事実上の借り換えとも映る。安易な利用は、将来の経営判断にも影響しよう。一方、当局の緩い審査は国民の不信を招く。双方とも公的資金の重みを熟慮したうえで、適切な制度活用を望みたい。2022.5.20


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