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社説 業績の下振れリスクに警戒を

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 銀行の2022年3月期決算は大手行・地域銀行とも最終増益が相次ぎ、業績の復調を印象付けた。コロナ禍で停滞していた経済活動の回復に伴う資金需要などが寄与した格好だ。ただ、先行きは米国の金利上昇や為替変動、ウクライナ情勢など不透明な状況が続く。あらゆるリスクシナリオを想定し、備える必要がある。業績の下振れに警戒を怠れない。
 当期純利益は大手行5グループで前年同期比30%増、上場地域銀77行・グループで同24%増となった。取引先の倒産が減り、与信コストが想定より抑えられたのも大きい。資金利益は上向いてきたとはいえ、日銀の超低金利政策は当面続き、本格的な回復には遠い。それだけに収益の下押し要因となるリスク把握の徹底と管理の高度化が重要だ。
 特に市場運用は難しいかじ取りを迫られる。年明けからの米長期金利上昇で大手行5グループの外債含み損は3月末で1兆7千億円以上に膨らんだ。時価が回復しない外債が増えれば、一段の損失処理も免れない。地域銀も外債や株式などの有価証券運用で損失が広がった。市場の局面変化を捉えた最適なポートフォリオ構築を急ぎたい。
 ウクライナ危機が長引くリスクも懸念材料だ。3メガバンクグループはロシア関連融資の引当金などで約3400億円の関連損失を計上したが、追加引当など長期戦に備える必要も出てくる。
 円安進行や資源高も景気に逆風となっており、内需型の企業には大きな痛手。コロナ禍で借り入れた融資の返済が本番を迎えるなか、さらなる経営悪化も懸念される。取引先の財務・資金繰りの実態把握や返済余力の分析など、きめ細かな与信リスク管理が求められる。グローバル環境の不安定要因が多様化するなか、ストレステストの高度化にも取り組んでほしい。2022.5.27


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