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社説 日銀は緩和政策の再点検を

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 日本銀行は6月16、17日の金融政策決定会合で、大規模緩和の維持を決めた。引き締めに動く米欧の中央銀行とは逆を行き、金利差拡大に伴う円安の是正には動かなかった。景気の下支えを優先した判断だが、円の独歩安が進むリスクをはらむ。輸入品の価格上昇に拍車がかかれば景気を冷やしかねず、緩和政策を続けることとの矛盾は否めない。日銀には政策の再点検を求めたい。
 今会合では市場関係者の間で、為替に配慮した政策修正を行うと見る向きもあった。円安加速が企業や家計の負担を増やすとの批判が強まっていたためだ。だが、黒田東彦総裁は景気回復の弱さを理由に引き締めには動かず、緩和継続の正当性を訴えた。
 問題は急速な円安が経済に負の側面をもたらす点だ。東京商工リサーチの調査では、1ドル=130円前後の円安で中小企業の半数が「経営にマイナス」と回答。米国の利上げ次第で1ドル=140円を超す可能性も指摘され、日銀は説明の整合性が問われる。緩和策の効果と副作用を改めて検証すべきだ。
 海外の主要中銀が相次ぎ利上げするなか、日本だけが取り残されている。米欧の急速な金融引き締めで世界経済が失速した場合、追加の緩和策を取れない事態もあり得る。9年を超す異次元緩和で出口戦略のハードルは高まっているが、日銀には複雑化した政策の修正や正常化に向けた議論を今こそ望みたい。
 もっとも、緩和継続は政府の要請も背景にある。先に公表された「骨太方針」では基礎的財政収支(プライマリーバランス)目標が削除され、国債の利払い負担増につながる金融引き締めに一段と動きにくくなった。だが、財政悪化がより深刻化すれば、「日本売り」の円安進行を招く。政府には財政再建の道筋をしっかりと議論してもらいたい。2022.6.24


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