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社説 災害時の役割に思いを馳せよ

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 関東大震災(1923年)が起きた日にちなみ、9月1日は「防災の日」、その前後を含む1週間は「防災週間」に定められている。気候変動の影響だろうか、自然災害の発生件数は世界的にも国内でも増加傾向が続く。台風、豪雨、豪雪、火山の噴火など多様なリスクが混在するが、なかでも島国・日本では地震とそれに伴う津波被害は甚大かつ広範囲に及ぶ危険をはらむ。
 明治三陸地震(1896年)の死者・行方不明者数は約2万2千人。関東大震災は約10万5千人。阪神・淡路大震災(1995年)は6437人。東日本大震災(2011年)は2万2303人。南海トラフで今後40年以内に巨大地震が発生する確率は約90%、首都直下型地震は30年以内に約70%と想定されている。
 被災地を支える金融機関の役割は極めて大きい。有事に求められるのは、日常的に遂行している金融本来の役割を発揮することだ。被災直後は預金の払い出しや決済機能の確保、復旧段階では緊急融資や公的な各種支援策の周知、復興段階では事業再生のための資金供給やコンサルティング機能など、息の長い支援が必要となる。社会インフラである金融・決済システムは、普段は水や空気のような存在だか、ひとたび機能が失われればその影響は計り知れない。
 全国に店舗網を張る金融機関は自らも被災リスクを負う。東日本大震災では発生直後に銀行や信用金庫・信用組合などの約280カ店が閉鎖に追い込まれた。だが、当該金融機関の懸命な努力で迅速に業務を再開し、金融機能の維持に努めた。日本銀行が震災3年後の14年に実施したアンケートでは、金融機関の85%が全社的な業務継続体制を整備しており、定期的な見直しを行っていると回答した。
 金融機関の防災意識が高いことは言をまたない。それでもあえて、「災難の先触れはない」という先人の教えを引くことで、防災週間に際しての注意喚起としたい。2022.9.2


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