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社説 「不動の日銀」柔軟化へ議論を

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 外国為替市場で急速に円安が進んでいる。9月7日には一時1ドル=144円台まで下落、対ドルで24年ぶりの安値を更新した。利上げを急ぐ米FRB(連邦準備制度理事会)と大規模緩和を続ける日本銀行の金融政策の違いから金利差が拡大し、円売りが加速しているのが主因だ。過度な為替変動は景気を冷やしかねない。日銀は長期金利の上昇を抑え込む硬直的な政策の柔軟化などを探るべきだ。
 政府は物価高を招く円安に神経をとがらせ、9月8日には財務省と金融庁、日銀の3者会合を開催。神田真人・財務官は「あらゆる措置を排除しない」とけん制を強めた。為替介入を匂わせたが、その実現は難しい。インフレに苦しむ米国がドル安を容認する見込みは低いからだ。
 日銀も景気の腰折れを防ぐ観点から、すぐにマイナス金利を解除して利上げに動ける状況ではないだろう。金利の上昇が、債務として抱える国債の利払い費増につながる懸念があることも理解できる。
 そのため、金融界では円安局面で為替変動の増幅を招いた「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)」の柔軟化を期待する声がある。10年物国債金利の変動レンジの上限(0.25%)を守るという厳格なターゲット設定が、市場の投機対象になったためだ。緩やかな金利上昇を一定程度認める姿勢に転じれば、急激な円安進行を抑えられる可能性がある。
 円は対ユーロでも下落している。欧州中央銀行(ECB)が大幅利上げを決めたことを受け、9月12日には約7年9カ月ぶりの円安・ユーロ高水準を付けた。円の独歩安が進むリスクが現実味を帯びる。
 内需型企業にとっては輸入コスト急上昇を通じ打撃となる。家計にも重くのしかかり、厚生労働省の調査では実質賃金が7月まで4カ月連続で前年同月比減少した。この状況が続けば、景気の下押し圧力となる。「不動の日銀」に政策柔軟化への議論を望む。2022.9.16


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