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社説 商工中金は民間連携の深化を

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 政府は、商工組合中央金庫を完全民営化する方針を固めた。3月上旬に商工中金法改正案を閣議決定し、今国会に提出する。改正案には、公布後2年以内に政府保有株を全て売却する規定が盛り込まれる。ただ完全民営化後も、純粋な民間金融機関とは出自の異なるアイデンティティーが強みとなりうる。その特性を生かし、民間との連携・協業路線を深化させてほしい。
 改正案は、中小企業庁の有識者会議が2月にまとめた報告書に基づいて作成される。有識者会議は、商工中金法の民業圧迫回避規定を残したうえで、さらに「民間金融機関との連携・協業を進める規定を創設すべき」と提言した。
 中小企業取引で競合してきた地域金融機関の中には、民営化後の商工中金との過当競争を懸念する声もある。もし両者が貸出金利のダンピングにしのぎを削るようなら、懸念は現実のものとなろう。
 だが、商工中金が目指すビジネスモデルは、スタートアップ支援や事業再生支援などの脱・金利競争分野だ。商工中金は全国に99拠点を展開しているが、都道府県別の支店数は大半の県で1~2カ店に限られる。各地域に豊富な店舗網と情報網を持つ民間金融機関と手を組むことで、企業支援の効率が高められる。
 同じ政策金融機関の日本政策金融公庫は、5年前のトップ交代を機に民間金融機関との協調路線にかじを切った。一定額を超える貸出については民間金融機関との協調融資で行うことを原則化。そうした案件が増えている。2016年に危機対応融資で組織ぐるみの不正が発覚した商工中金も、民間起用の関根正裕社長の下で「解体的出直し」を掲げ、改革を進めてきた。
 現状、両機関に対する民業圧迫批判の声は減っている。コロナ下ゆえの特殊要因である可能性も排除できないが、官民の関係が転機を迎えているのは確かだ。互いに連携して中小企業を支える仕組みづくりが今後の課題となる。2023.3.3


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