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社説 ゼロゼロ融資先の早期再生を

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 新型コロナ対策の資金繰り支援として、民間金融機関を通じて貸し出された実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資の返済開始時期が、7月にピークを迎える。その後も2024年4月まで高水準で推移する見通し。返済余力が乏しい債務者の借り換えニーズへの対応や、事業者がじり貧状態に陥る前に早期再生に着手する取り組みが、金融機関に求められている。
 民間ゼロゼロ融資の実行件数は137万件。うち約3分の1の47万件(22年12月末時点)は返済開始が据え置かれており返済負担がのしかかってくるのはこれからとなる。政府は救済策として、1月に借換保証制度を創設し返済開始をさらに先延ばしできるようにした。ただ、利用件数は開始4カ月で約3万6千件。今のところ活用状況は低調だ。
 現時点で、金融機関が経営不振の取引先に対して本格的な事業再生支援に乗り出す機運は乏しいようだ。痛みを伴う抜本的な再生を取引先に促すのが難しくなっているのが一因だろう。08年のリーマン危機後に制定された中小企業金融円滑化法(13年に失効)の影響で、金融機関が返済猶予に簡単に応じるようになり、事業者側の切迫感が薄れた。
 金融機関の人材不足も深刻だ。不良債権処理が最大の経営課題だった1990年代後半から2000年代前半には、エース級を融資・審査ラインに配置して「外科的手術」と称される抜本的再生に取り組む銀行が多かった。その時代を知るエキスパートが定年期を迎えており、高度なノウハウの伝承が危ぶまれている。
 18年以降、地域銀行の不良債権残高は増加に転じている。返済が滞っても信用保証協会が損失を補う民間ゼロゼロ融資は金融機関にとってノーリスク債権だが、存続可能な事業者が姿を消していけば地域経済の衰退が避けられない。事業再生は企業の資金が枯渇する前に着手する「早期再生」が鉄則であり、金融機関にはその実践を期待したい。2023.6.9


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