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社説 アルムナイを競争力に

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 転職や起業などを理由に退職した「アルムナイ(卒業生)」と交流する仕組みを整える動きが広がっている。外部で経験を積んだ人材の存在は組織に活力を生み、変革力を高める可能性がある。従来と異なる社会課題の解決や新事業創出へ活用を選択肢に入れるべきだ。
 退職者と交流する仕組みは大手行や証券会社、保険会社が相次いで立ち上げている。地方銀行でも2023年に入り、横浜銀行や群馬銀行が創設した。7月に初会合を開いた三菱UFJ信託銀行はコミュニティーを求める退職者の声を人事部門がキャッチし、公認のネットワークにした。運営開始から丸3年が経つ、みずほフィナンシャルグループの登録者は1千人を超えた。社内情報の発信やプロパー人材との交流を通じ、組織活性化や新事業での協業につなげる狙いがある。会合には役員が出席する例も多い。
 外部で異なる企業文化を経験したアルムナイの利点は生え抜き人材と「共通言語」で語り合える点だ。外の世界で挑戦し、元の職場を見つめ直した人材がプロパー組に与える刺激は大きい。
 ネットワーク化と同時に採用制度を整える例は多い。地銀でも「出戻り行員」が核になり、新たな融資手法を確立するなど新風を吹き込むケースが生まれている。専門人材不足に悩む金融界にとって、こうした人材の活躍は多様性を受け入れる企業文化を発信でき、採用面のブランド力向上につながる。
 問われるのは制度の持続性だ。定年を待たずに退職した「裏切り者」との認識が経営陣を含めて根強ければ長続きは期待できない。そんな固定観念がはびこり、多様性を生かせない風土は生え抜き組の流出にもつながりかねない。
 金融界に期待される課題解決の幅は格段に広がった。アルムナイは人的資本経営のカギを握る要素であり、日本経済・地域経済の変革を支える競争力の源泉になりうる。2023.7.28


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