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社説 不正保険金請求の原因究明を

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 中古車販売大手のビッグモーターで車体を修理するために預かった自動車を社員がわざと傷つけ、自動車保険の保険金を水増し請求する不正が横行していた。車を扱う事業者としてはもちろん、損害保険代理店としても、利用者の信頼を裏切る悪質な行為だ。同社と大手損害保険会社のもたれ合いの関係にも世間から厳しい目が向けられている。監督官庁の国土交通省と金融庁は不祥事の全容解明を急ぎ、同社に限った問題なのか、業界共通の構造的問題があるのか、徹底的に調査すべきだ。
 同社の兼重宏行前社長は引責辞任を発表した7月25日の記者会見で、経営陣の関与を否定したうえで「工場長が(ノルマ達成のために)指示してやったのだろう」と語るなど、現場に責任転嫁するような発言に終始した。第三者委員会は6月にまとめた調査報告書で、同社の不正の原因として、(1)不合理な目標値設定(2)ガバナンスの機能不全(3)経営陣に盲従し忖度(そんたく)するいびつな企業風土――を指摘した。組織的なひずみを抱えていたことは明らかだろう。
 この報告書には保険契約に関する不正の記述はないが、本来は契約者の自署が必要な保険契約書類をビッグモーター社員が代筆していた疑念も浮上している。7月25日の会見では、役員が「(関係部署から不正が)あったという話は聞いている」と認めた。
 損保会社は自動車事故に遭った保険契約者に修理業者としてビッグモーターを紹介。同社は紹介件数に応じて損保各社に自動車損害賠償責任保険の契約を割り振っていた。こうした「持ちつ持たれつ」の関係が不正の温床となった可能性が指摘されている。
 金融庁は7月31日、損保会社に対し保険業法に基づく報告徴求命令を出した。法令違反が見つかれば行政処分に発展する可能性もある。損保各社は、なぜ保険代理店の不正を早期に是正できなかったのか原因を究明したうえで再発防止策を講じる責務がある。2023.8.4


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