「ニッキンONLINE」創刊!
 
HOME > 「ニッキン」最新号から > 社説 > 社説 日銀は変化見極め柔軟対応を

社説 日銀は変化見極め柔軟対応を

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 日本銀行が7月28日、長期金利も低く抑える「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)」の修正を発表した。2%の物価安定目標が見通せるまでYCCを維持し、金融政策の持続性を高める柔軟化は評価できる。ただ、「±0.5%程度」の変動許容幅を「目途」として維持したのは「金融引き締め」との印象を避ける狙いと推察できるものの、分かりにくさは否めない。丁寧な説明を続け、混乱を招かないよう「市場との対話」に目配りしてほしい。
 日銀は変動許容幅としてきた0.5%を超えても、1%を上限に一定の上昇を容認することを決めた。実態を表していない場合は機動的に国債を買い増し、上昇スピードを調整する方針だ。このような対応を通じて長期金利の形成をある程度、市場に委ねるのは、将来の出口に向けた大きな一歩になる。
 今回の修正は市場機能の低下など副作用軽減が期待できる。特に、2024年度以降の物価が想定を上回るような将来リスクに先手を打つ意味は大きい。植田和男総裁は「リスクが顕在化したところでやろうとすれば極めて副作用が強くなる」と強調した。
 米欧の主要中央銀行による利上げや国内外の物価上昇が続いており、投機的な売買が膨らめば国債購入が増え過ぎる恐れがあった。結果的にYCCを放棄せざるを得なくなる可能性も否定できず、妥当な判断だろう。さらに、変動許容幅を「目途」として温存したのは外的なショックが生じ、長期金利がマイナス圏で低下し過ぎるリスクにも目配りした結果と言える。
 今後の焦点は物価上昇の持続性の見極めになる。賃金や物価が上昇しにくいことを前提にした家計や企業の行動に変化の兆しが出始めている。植田総裁には環境変化に柔軟に対応しながら、現れ始めた「芽」を育て、まずはマイナス金利政策の解除へ導いてほしい。2023.8.11


ニッキンのお申し込み

ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。

申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事