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社説 男性育休、取得しやすい風土を

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 産後パパ育休(出生時育児休業)制度の創設や育児休業の分割取得可能な仕組みが始まってから間もなく丸1年になる。金融界では急速に男性の育休取得が広がっている。この動きを続けるため、現場の歪(ひず)みを生まないよう組織的な対応を忘れないでほしい。
 厚生労働省の調査によれば、金融・保険業で過去1年間に配偶者が出産した男性労働者の育休取得率は37%(2022年10月1日時点)になり、前年度を下回ったが、全産業ベースの17%を大きく上回る。22年10月開始の産後パパ育休の取得者はほぼ反映されておらず、さらに上昇する見通しだ。10年前は1%にすぎず、隔世の感がある。
 男性が取得するかは職場の風土が影響しやすい。内閣府の調査によれば、前例がある職場は取得しやすいと感じる男性が多い。取得者がいる職場は、いない場合に比べて最大7倍近い差があった。人事部門や上司から子供が生まれた男性に取得を勧める動きは広がっており、当たり前になればためらいは減るだろう。
 一方、取得を前提にした環境は改善の余地がある。現場任せにすることなく、組織的な対応策を講じてほしい。戦力が抜けた穴を埋めず、周囲にしわ寄せが生じれば機運は簡単にしぼむ。上司や同僚を気にして「抵抗感」を持つ男性は女性より多い。内閣府の別の調査では、1カ月以上の育休を取得しない理由のトップは「職場に迷惑をかけたくない」で、37%に達した。
 ある地方銀行の女性役員は育児経験から得られる生活者としての感覚など気づきをすべて吸収してほしいとして、「育休は出向と捉えよう」と呼びかける。名称から想起される「休む」というイメージを周囲や本人から払拭(ふっしょく)したいとの思いもある。
 男性の育休は女性以上に学べることが多い。休業明けに一回りも二回りも人間的に成長した姿を見せる取得者が増え、周囲も歓迎する好循環を確立してほしい。2023.8.25


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