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社説 行政方針のカギは動機付け

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 金融庁は8月29日、金融行政方針を公表し、この先1年間の重点施策を明示した。現政権が掲げる「資産運用立国の実現」や「スタートアップの成長」など旬のテーマに目が向きがちだが、地域金融機関にとっては営業店・行職員に対する二つのインセンティブ(動機付け)のあり方に関する記述にも注目してほしい。
 一つ目は、事業再生・経営改善支援に関する動機付けだ。組織のビジネスモデルと、そこで働く個人の業績評価が同じ方向を向いているか。実情を調査する姿勢を示した。
 実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化しており、企業支援の重要性は論をまたない。ただ、盲点もある。ゼロゼロ融資は、国などが貸し倒れリスクを全額負う。もし金融機関が短期利益にのみ目を向けるなら、他の収益分野に人員を投入する方が理にかなう。実際、「地域金融機関の再生支援の動きは鈍い」(関係筋)という。
 だが、地域に必要とされる事業者が倒れれば、地域金融機関の事業基盤は弱体化する。中長期的な視点に立ち再生支援に乗り出すべきだ。
 二つ目は、高リスクの金融商品を販売する際の動機付けだ。大半の金融機関は、収益に偏重しない業績評価体系とすることで、顧客本位の提案セールスを行うとうたっている。だが、多くの先で販売手数料の高い外貨建て保険や仕組み債の評価ウェートが高くなっており、「営業現場がこれらの販売に傾注していた」(金融庁)という。
 この指摘には既視感が拭えない。リスク許容度の低い層に高リスク商品を売り込み、苦情が増えてくると当局から抑止を迫られる。過去何度も繰り返されてきた構図だ。
 高齢者や資産形成層に必要な商品は何か、良識ある金融関係者であれば答えは明白だろう。従業員が良心を痛めることなく、適切なコンサルティングを行える環境になっているか。いま一度、業績評価のありようを見直してほしい。2023.9.8


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