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社説 損保ジャパンを他山の石に

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 損害保険ジャパンとその親会社のSOMPOホールディングスは9月8日、中古車販売大手ビッグモーターによる保険金不正請求問題に関して会見を開き、損保ジャパンの白川儀一社長が辞任を表明した。不正の疑惑が残る中で取引再開の判断を下したのは早計であり、辞任は妥当だろう。ただ第三者委員会の調査は進行中であり、金融庁の立ち入り検査もこれからだ。トップ退任をもって幕引きとせず徹底的な真相究明を求めたい。
 ビッグモーターの取扱保険料のうち、損保ジャパンは約6割のシェアを占めていた。事故に遭った契約者のうち、修理先が決まっていない顧客をビッグモーターの整備工場に紹介しその見返りに自動車損害賠償責任保険の契約を獲得する蜜月の関係にあった。
 ビッグモーター社員の内部告発によって修理費用の水増し請求の疑いが浮上し、損保各社は事故車の紹介を停止していたが、損保ジャパンだけが昨年7月に再開。その背景として、白川氏は「競合他社に取引がシフトする強い懸念を持っていた」と会見で認めた。
 保険契約者の利益よりも自社の業績や有力取引先との関係維持を優先した経営判断であり、看過することはできない。短期的な業績に固執する姿勢はビッグモーター社の成果偏重の社風にも共通する。2023.9.15
 今回の問題が個別事例に限った判断ミスだったのか、組織的な体質に根差しているのかは、外部弁護士による調査や金融庁の検査によって今後明らかになるだろう。その結果を踏まえて再発防止策を講じることが、信頼回復の第一歩となる。親会社によるガバナンスが働かなかった理由についても検証が求められる。
 金融機関を含めた営利企業が大口取引や目先の収益を失うことになっても、顧客本位の営業を貫けるかは普遍的なテーマだ。企業の不祥事の多くは業績至上主義に起因している。今回のケースを他山の石として自社の組織風土を再点検する意義は小さくない。2023.9.15


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