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社説 ベンチャーデット拡大に期待

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 大手行グループや地方銀行が新しいスタートアップ向け融資に力を注いでいる。株式発行による調達と銀行融資のすき間を埋める「ベンチャーデット」と呼ばれる手法を使い、成長を後押しする。日本経済の成長は技術やアイデアを持つ新興企業の育成がカギを握っており、積極的に挑戦してほしい。
 ベンチャーデットは融資や社債に新株予約権を付ける手法で、新興企業にとって資本性資金と借り入れの双方の性質を持つ。メガバンクや静岡銀行などが始めており、株式の希薄化を抑えたい新興企業のニーズがある。銀行は融資利息だけでなく、将来的な株式売却による利益を加味することにより赤字でも資金供給の道筋を描きやすくなる。製品・サービスを開発した後に事業拡大を目指す「アーリー期」や軌道に乗り始めた「ミドル期」、上場を視野に入れる「レイター期」の新興企業が利用するケースが多い。
 新興企業は一般的に投資が先行し赤字が続き、通常審査の枠組みでは融資が難しい。問われるのは将来性を見極める目利き力であり、学識者と連携するなど審査手法を確立してほしい。米国では出資するベンチャーキャピタルの質も点検する。大手行役員は「専門知識が必要な技術評価力は一朝一夕に養えないが、今後の競争力を左右する分野であり、挑戦する価値がある」と話す。新手法は融資後の伴走支援が重要で、金融庁が創設を目指す事業成長担保権の活用にもつなげられる。
 育成先進国の米国では、成長を支援するエコシステムに組み込まれている。米調査会社のピッチブックによれば、2022年の米スタートアップの調達額は312億ドル(約4兆3千億円に達する。新興企業向け資金の出し手が手薄な日本は、ベンチャーデット市場も黎明(れいめい)期にある。新手法に挑む例は少数にとどまるが、幅広い顧客網を使った支援も可能な銀行界が果たせる役割は大きい。2023.10.6


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