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社説 ゼロゼロ融資の教訓を次の備えに

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 会計検査院の検査で、新型コロナウイルス対策の実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資の焦げ付きが多額に上る懸念が明らかになった。日本政策金融公庫と商工組合中央金庫が融資した約19兆円を調べたところ、2022年度末時点で1兆円を超える債権の回収が危ういと分かった。
 民間金融機関によるゼロゼロ融資を合わせると融資総額は約43兆円に上る。この制度は緊急避難的な救済措置であり、厳密な審査よりも迅速な資金供給が優先された。金融の常識から考えて一定のデフォルト(債務不履行)は避けられない。足元で企業倒産件数は増加傾向にあり、不良債権額は今後も膨らむだろう。
 国民負担を最小限に抑えるには債務者の事業を軌道に乗せる本業支援がカギとなる。政府系と民間の金融機関が連携し、マンパワーの許す範囲で手を尽くす必要がある。
 日本公庫の場合、東日本大震災関連融資は約27万件、リーマン・ショック後(09年度)の融資申込件数は約50万件だったのに対し、コロナ対策貸付は118万件に上った。ピーク時には一日1万4千件の申し込みが殺到した。次に同じ規模の融資件数が集中するとすれば、最も警戒すべきは地震や経済危機よりも、やはりパンデミックだろう。
 検査では貸付時のチェックが不十分だった事例が59件、借り手の状況を十分把握しないまま回収不能と判断した事例が30件見つかった。全件に占める割合こそ低いが、税金が投入された以上、不備を見過ごすことはできない。
 ゼロゼロ融資の開始直後、政府系金融機関への申込方法は紙の書類が約8割を占め、手続きに忙殺された。だが、システム改修や周知活動の結果、取扱期間の終盤にはインターネット申し込みと紙の比率が逆転したという。ゼロゼロ融資の教訓を踏まえ、次の危機に備える余地は他にもあるはずだ。コロナ禍を奇貨として官民が意見を出し合い、改善策を練る必要がある。2023.11.17


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