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社説 新NISA、提案力競え

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 新しい少額投資非課税制度(NISA)のスタートまで1カ月余りになった。現行制度の口座保有者には自動的に新勘定が作られ、新規開設の受け付けは12月中に始まる。1人1口座しか開けず、口座獲得競争は過熱ぎみだ。囲い込み戦略は理解できるが、大事なのは高い提案力を磨くことだ。企業支援と同様に資産運用分野でも伴走支援が根づくことを期待したい。
 新NISAはつみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が240万円まで非課税で投資できる。最大の魅力は非課税保有期限がなくなり、制度が恒久化したことだろう。メガバンク首脳は「政官の取り組みは想像以上。今度は民間のわれわれが投資文化を根づかせる番」と意気込む。
 新NISAは一向に進まなかった「貯蓄から投資へ」の流れを創り出す最後のチャンスになる。国内では持続的な物価上昇の兆しが出ており、「お金に働いてもらう」という提案は顧客の心をつかめることが多くなるだろう。約30年続いたデフレ下と異なり、顧客の実感が伴いやすくなる。
 現行NISAは不稼働口座が多い。金融庁によれば、1年間に買い付けがなかった一般NISA口座は53%(2022年)に達する。改善傾向にある「つみたてNISA」でも26%残る。顧客の事情による場合もあろうが、口座獲得だけに熱を上げ、フォローされず放置されているケースは多いはずだ。非課税保有期間が無期限の口座を託されることは生涯にわたって顧客の人生に寄り添える機会を得られたと捉えてほしい。
 98年に投資信託の銀行窓販が解禁されてから12月で丸25年になる。当時の大蔵省は、今で言う資産形成の裾野拡大の役割を銀行に期待した。検討に携わった同省OBは「銀行なら信頼を裏切る行為はしないだろうという意識が根底にあった」と振り返る。25年間、実現しなかった潮流を変えられるか。新NISAはその分岐点になる。2023.11.24


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