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社説 預金の重要性高まる局面に

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 預金金利引き上げの動きが全国に広がってきた。今のところ、対象は期間5年以上の定期預金が大半のため、大きな預金シフトは考えにくいが、いずれ期間の短い定期預金や普通預金に拡大することが想定される。金融機関は、これまで以上に預金の動向に注意を払う必要があろう。急な預金の動きが発生しないとは言い切れない。
 定期預金金利の全国的な引き上げは2006年3月以来となる。日本銀行の統計によると、それまで減少傾向にあった銀行の定期預金残高は、金利引き上げ後に増加へ転じ、06年3月末の216兆円から09年7月に257兆円まで増えた。その後、横ばいが続き、16年2月のマイナス金利導入で金利引き下げが相次ぎ、再び減少に転じた。金利に預金者が敏感に反応することは明らかだ。
 マイナス金利導入後、普通預金金利と定期預金金利の差が、ほとんどない時代が続き、普通預金に滞留する資金が定期預金を大幅に上回っていることにも注意が必要だ。デジタル化が進み、スマートフォンの操作で簡単に資金を移動できる。顔の見える取引ならば、「動かすのは担当者に悪い」といった感情が働くかもしれないが、インターネットバンキングでは心理的ハードルは低い。SNSとインターネットを通じ、急激な預金流出に見舞われた米国の地方銀行が相次いで破綻したことも記憶に新しい。
 マイナス金利導入で、利ざや確保が難しくなり、金融機関の間に、預金は“お荷物”という空気もあった。ただ、日銀の政策修正で金利が上昇してくれば、貸出や資金運用で利ざやが確保しやすくなり、預金は再び収益を生み出す源泉として重要性が高まる。「預金をとりに行く」という銀行トップもおり、預金獲得競争が激しくなる可能性もある。貸出や預かり資産営業に傾注してきた営業現場では預金の重要性を意識した行動が求められよう。2023.12.8


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