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社説 安心して使える成年後見制度に

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 政府は、認知機能が低下した高齢者らに代わって財産管理する「成年後見制度」を見直す検討に入った。かねて「使い勝手が悪い」と指摘され、利用が伸び悩んでいる。超高齢社会を迎えた日本では重要な制度であり、利用促進に向けて改善を急ぐべきだ。
 2000年4月に始まった成年後見制度は認知症や知的障がいがある人の財産などを、家庭裁判所が選んだ後見人が代行して守る制度だ。だが、認知症患者が25年に推計約700万人に達するのに対し、制度利用者はわずか3%程度に過ぎない。
 問題点として、後見人の権限が強すぎることや一度利用すると原則やめられないことなどが挙げられる。弁護士など専門職が後見人の場合、月数万円の報酬を払い続けなければならず負担が大きい。本人を守る制度でも厳格な運用で普及を妨げては意味がない。権限の制限や一定期間後に利用終了できるなど柔軟化への検討を進めてほしい。
 成年後見の利用が広がれば、代理権のない家族からの取引依頼が増えている金融機関窓口の業務負荷軽減にもつながる。「親の取引を巡って兄弟間でトラブルとなり対応に困った」(信用金庫)といった事例は少なくない。金融界として対応に苦慮している実態を、見直し議論の場などで訴えていく必要もあろう。
 一方で高齢顧客と日頃接する金融機関の強みを生かし、成年後見の普及へ主体的に関わることも求められる。そのためには自治体や社会福祉関係機関との連携が不可欠だ。
 豊田信用金庫は成年後見支援で豊田市などと社会福祉連携推進法人を立ち上げ、後見人の“担い手”不足解消に乗り出した。営業店で職員が認知症発症などの変化を感じた際に紹介するといった連携も念頭に置くという。安心して利用できる成年後見制度に向けて、運用面の改善とともに、地域全体で高齢者や障がい者を守る取り組みが全国で広がることを期待したい。2024.3.15


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