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社説 貸出金利引き上げ準備周到に

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 「金利のある世界」が復活した。日本銀行がマイナス金利政策を解除し、長らく逆境が続いた金融界にとっては預貸金利ざやの改善へ追い風となる。だが、超低金利環境が長期化した金融機関の営業現場では行職員の多くが利上げ交渉の経験がなく、収益改善に直結するとは限らない。金利上昇への備えが急がれる。
 「ゲームチェンジという認識」。17年ぶりの日銀利上げを受け、みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長はビジネスへの好影響をこう表現する。実際、メガバンクは貸出金のうち市場金利に連動する残高が約8割を占め、金利上昇の恩恵を受けやすい。
 加えて政策金利が先行して上昇した米欧など海外拠点では金利に上乗せするスプレッド交渉を経験済みで「国内法人に対してもノウハウが生かせる」(企画担当役員)。
 一方、地域金融機関は短期プライムレート(最優遇貸出金利)に連動した貸出金の割合が高い。短プラは各行とも2009年以降据え置いているが、日銀の追加利上げ次第で引き上げに動く可能性がある。ただ既存先の金利引き上げには交渉を要する。今後のさらなる預金金利上昇も見据え、準備を早めるべきだ。
 営業現場では、取引先と信用リスクや事業価値などに関して対話し、適正金利の意味を丁寧に説明することが重要だ。そのための行職員研修に力を入れてほしい。顧客への交渉経験がある部店長らを講師にしても良いだろう。
 もっとも利上げは顧客離れを招く危惧もある。東京商工リサーチの調査では、融資金利が0.3%上昇した場合、企業の半数が「他行へ調達を打診する」と答えた。利上げ単体でなく、コンサルティングや販路拡大支援などソリューション提案との組み合わせが欠かせない。非金利サービスの強化でプライシングへの納得感が得られるはずだ。
 金利正常化という局面変化を貸出ビジネスの付加価値向上につなげる好機にしたい。2024.4.5


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