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社説 賃上げだけで離職は防げず

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 大手行、地域銀行、大手信用金庫(預金量上位50先)の計156機関・グループのうち、7割超が2024年度から初任給を引き上げた。さらに、25年度も約6割が初任給の引き上げを決定・検討していることが本紙調査で明らかになった。若年労働力人口の減少に伴って新卒採用競争は激化しており、優秀な人材をつなぎ留めるためには入行庫後の人材育成プランやキャリアデザインが課題となる。
 採用難や急激な物価上昇を背景に、他産業も初任給引き上げに動いており、長期デフレに苦しんだ時代とは隔世の感がある。北国フィナンシャルホールディングスと東京スター銀行は、総合職の初任給を27万円台に引き上げた。同業態の水準がほぼ横並びだった状況は一変し、採用戦略の差が顕著になりつつある。
 バンカーの育成には時間とコストがかかる。銀行や信金が扱う金融商品は増え続けており、多様な資格や検定にパスする必要がある。そのため「下積み期間が長い」という印象を持つ学生もいるようだ。入社3年以内の離職率は3割以上と言われ、賃上げだけでは優秀な人材をつなぎ留めることは難しくなっている。
 いかに働きがいを高めるかは永遠の課題だ。金利のない世界では、企業の経営課題を解決してフィーを得るコンサルティング業務が存在感を増した。金利が復活してもコンサル機能はライバルとの差別化を図る競争力の源泉となるだろう。新NISA(少額投資非課税制度)がスタートして盛り上がりをみせる預かり資産営業でも、専門的な知識と高い提案力が求められる。
 業務の多様化が進むなか、行職員の希望と適性を踏まえてキャリア形成を支援する仕組みづくりが急務だ。また、若手や中堅が成長を実感できる職場環境の整備や、柔軟な働き方を認める人事制度の見直しなど、定着率を高めるためにできることは多い。手をこまぬけば、人材獲得競争で劣後することになる。2024.4.26


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