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社説 行動促す金融教育推進に期待

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 国民の金融リテラシー引き上げの司令塔となる金融経済教育推進機構(J‐FLEC)が動き出した。金融広報中央委員会や日本証券業協会、全国銀行協会などから事業を引き継ぎ、8月に本格稼働する。各団体が取り組んできた金融教育の機能を一元化し、推進に責任を負う組織が明確化された意義は大きい。個人の資産形成をサポートする土台作りに総力を挙げてほしい。
 大きな課題が、幅広い年齢層に金融経済教育の提供機会を増やすことだ。金広委の調査では金融教育を受けた人の割合が7%で米国の20%と大きな差がある。インフレ局面では、これまで問題視されていなかった預金の実質価値が目減りしかねず、「貯蓄から投資」へのシフトは急務だ。
 J‐FLECは学校や企業などへの講師派遣を年間1万回行い、75万人の受講を目指す目標を掲げた。もっとも企業にとっては業績に直結しにくい金融経済教育の優先順位は必ずしも高くない。安藤聡理事長が就任会見で語った通り、企業トップらへ積極的に働きかける「プッシュ型の活動」が重要になる。
 ただ、金融知識を増やすのがゴールではない。行動に結びつけることが肝要だ。日証協の調査では少額投資非課税制度(NISA)の未稼働層の5割で「損失が心配」と答えている。資産運用で価格変動は避けられないが長期保有でリスクを抑えられるなど、行動を起こせるよう腹落ちするまで伝える工夫が要る。
 それだけに担い手となる「認定アドバイザー」の役割は重い。中立性や経験・知識などの資格要件だけでなく、信頼される人格や高いコミュニケーション力も欠かせない。アドバイザーの質を維持するための適切な報酬水準や研修機会などが必要となろう。
 一方、アドバイザーの周知では職域営業を推進する金融機関との連携も重要だ。資産運用立国の礎となる金融教育推進に官民一体で取り組んでもらいたい。2024.5.10


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