社説 公的資金の国民負担回避を
金融機能強化法は、2004年8月に施行されてから、今夏に丸20年の節目を迎える。同法は時限立法だが、金融危機や大型地震、パンデミックなどを契機として四度にわたって延長されてきた。前回の法改正では、金融機関による公的資金の申請期限を26年3月末まで4年延ばした。
この法律を運用する金融庁は決して公言はしないが、5度目の延長も視野に入れているはずだ。有事の際に円滑な延長措置を行うためにも、国民負担が発生しないように細心の注意を払う必要がある。
法律の趣旨は、金融機関の救済ではなく、金融機関の経営を安定させることで地域経済を支えることにある。1997年に北海道拓殖銀行が破綻した後、道内経済は急速に悪化した。その体験は、いまも金融庁の組織的なトラウマとなっている。迅速に公的資金を投入できる同法が、金融システムを守るために果たしてきた役割は大きい。
一方で、金融機関経営者のモラルハザード(倫理観の欠如)を懸念する声は長年存在する。その側面が強調され、国民の理解が得られなくなれば、同法は期限到来時に役割を終えることになるだろう。
同法に基づき、これまでに30金融機関へ公的資金7160億円が投入された。3月末の返済額は3095億円。過去、国民負担は生じていない。
きらやか銀行は24年3月期に過去最大の赤字となる見通しを発表。同法を利用した3回のうち、最初に投入された公的資金200億円の返済が困難になった。返済期限は今年9月末。返済時期の見直しを国と協議するという。
同行トップは経営責任を明確化するため、国との協議にめどがついた時点での辞任を表明した。同行が返済への道筋を明確に示すことが前提だが、金融庁には法の趣旨に鑑みて柔軟な対応を望みたい。
ただし、公的資金の重みを踏まえ、金融当局と民間金融機関のなれ合いだけは厳に慎まなければならない。2024.5.17
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