社説 労組は従来の枠組みを超えよ
金融労組界の新たな組合年度が10月にかけて相次ぎスタートする。新執行部は2025年春闘での持続的賃上げ実現に向けた議論が優先課題となろう。一方、最近はジョブ型人事や専門人材の採用など、雇用形態が一律ではなくなっている。労組はこうした新しい働き方に対応すべく、従来の枠組みを超えた労使交渉や従業員の権利保護のあり方を検討する必要がある。
24年春闘ではメガバンクや大手地方銀行が3%以上のベースアップに踏み切るなど、高水準の賃上げが相次いだ。来春もこの勢いを持続できるかが焦点となるが、労組の間では給与の一律アップは「優秀な社員のモチベーション向上につながりにくい」との声も出始めた。背景にあるのが働き方の多様化だ。
年功序列モデルが揺らぎ、役割や成果に応じて賃金差を付ける傾向が強まっている。産業界では「脱一律」の賃金要求が広がっており、金融労組も時代の流れに合わせた要求手法を探るべきだ。
人工知能(AI)の普及で進む事務の合理化も、従業員の仕事に変化を及ぼしていよう。実際にどのような影響が生じているかや適応策などについて、権利保護の観点から労使で問題意識を共有することが求められる。
また、「金利ある世界」で労働負荷が高まる懸念もある。預金獲得などで営業目標を設けたり、引き上げたりする動きが出ているためだ。業務量や心的ストレスなどの実態把握に努め、会社側に改善策を提案することも重要だ。
金融・保険業の推定組織率(23年)は44%と企業平均の16.3%を上回る。だが最近重視される、主体的に組合活動へ参加する「リアル組織率」は低水準だ。前例踏襲の組合活動を続けていては、一層低下するのは目に見えている。
労組は存在意義を高めるためにも、新たな課題に経営側と建設的な対話を通じて果敢に対処する“進化した労使共闘”を探ってほしい。2024.8.2
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