社説 強靭性の検証続け決済網支えよ
全国銀行資金決済ネットワークは、全国銀行データ通信システム(全銀システム)の刷新時期を2028年5月に決めた。23年10月に起きた大規模障害の再発防止を最優先し、当初計画から半年間後ろ倒しする。全銀システムは年間約3600兆円の銀行間送金を担っており、日本の決済網を支える責務がある。今後もレジリエンス(強靭(きょうじん)性)の検証を続け、運営に万全を期してほしい。
全銀システムは中継コンピューターを更改する際、プログラムの作業領域不足から障害が発生。2日間で約500万件の取引に影響が出た。全銀ネットは課題を洗い出し改善・再発防止策を策定。その対応が進んだことで、中断していた次期システム開発を再開した。まずは円滑な移行へ全力を挙げる必要がある。
今回、システム移行に際し仮に不具合があった場合は現行システムに切り戻せるように約1カ月間、並行稼働させると公表した。障害の反省を踏まえた適切な判断だ。
先の障害では影響のあった金融機関は限定されたが、より広範囲に及ぶ可能性も否定できない。障害の未然防止に向けてベンダー任せにせずシステム設計・製造工程への関与を強めることや、代替策に関する金融界横断での実践的な訓練といった対策を着実に講じることが求められるのは言うまでもない。
加えて、再発防止策や障害発生時の復旧に向けた業務継続計画(BCP)は一度確立すれば終わりではない。巧妙化するサイバー攻撃などの環境変化に合わせ、不断の検証と改善は怠れない。
一方で、次期システムはメインフレームのオープン化により拡張性・柔軟性が向上する。「システムの古いしがらみをクリアする」(全銀ネットの真壁崇・理事兼最高情報責任者)タイミングだ。利用者の決済ニーズや諸外国の資金決済動向を踏まえて、国内決済インフラの高度化・効率化の取り組みも進めてほしい。2024.10.25
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