社説 政治リスクへの警戒度高めよ
10月27日投開票の第50回衆院選で、自民・公明の与党が大敗し、議席は過半数を割り込んだ。自民党は「政治とカネ」問題で自浄能力のなさをさらけ出し、国民の不信を招いた。一方、立憲民主党は「敵失」で議席を大幅に伸ばしたものの、政権交代に自力で手が届くほどの議席は得られなかった。野党の政権運営能力に対する有権者の不安の表れだろう。いずれが政権を担うにしても、少数与党の政治は混乱する。金融界は政治リスクやそれに伴う市場の急変に備える必要がある。
当面、与野党が新たな政権の枠組みを探る展開となる。衆院で過半数の議席を持たない少数与党内閣が誕生すれば政治不安が強まるだろう。野党提出の内閣不信任案が可決されれば、政権は内閣総辞職か再び衆院解散を迫られる。
現時点では、自公が政権維持のために野党の一部に協力を求める展開がメインシナリオになりそうだ。物価高などに直面する国民生活の支援は必要だが、閣外協力や政策ごとの部分連合などの形で野党が発言権を強めた場合、経済対策と補正予算の膨張によって、放漫財政が助長される懸念がある。自公も来夏の参院選を見据え、安易な人気取り政策に走りかねない。
日本銀行への口先介入が強まるリスクもはらむ。金融緩和に前向きな政党の影響力が増せば、追加利上げ判断に影を落とす。石破茂首相は就任後、日銀の植田和男総裁と会談後に利上げけん制の発言をして金融界の不評を買った。市場は12月か来年1月の追加利上げを織り込んでいたが、選挙結果を受け不透明感が高まった。中央銀行の独立性は日銀が自ら守らなければならない。金融政策の専門家の立場に徹した判断を期待する。
投票が迫る米大統領選も接戦で、市場は波乱含み。中東情勢など当面は内外で不安定な政治環境が続く可能性が高く、金融機関は市場の急変も視野にリスク管理の警戒度を高める必要がある。2024.11.1
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