社説 好決算も改革の手綱緩めるな
大手行と地域銀行の2024年4~9月期決算は預貸金利ざやの拡大などを背景に、総じて好調だった。3メガバンクグループ(G)は政策保有株式の売却益も追い風に、純利益がそろって最高益を記録。地域銀も約8割の60行・Gが増益となった。ただ先行きは国内外の政治・地政学リスクなどが横たわり、油断できない。稼ぐ力を一段と高めるためにビジネス構造改革の手綱を緩めてはならない。
国内金利の復活や政策保有株削減、円安による海外収益が業績を押し上げた3メガG。2025年3月期は各社とも業績予想を上方修正し、純利益合計は前期比2割増の3兆7千億円になる見込み。
各社が重視する自己資本利益率(ROE)も三菱UFJフィナンシャル・グループで26年度目標9%程度の前倒し達成が視野に入るなど、改善傾向が鮮明だ。もっともROEが10数%水準にある海外大手銀とはなお開きがある。
米国のトランプ新政権下では関税政策による各国との貿易摩擦なども懸念され、事業環境の不透明感が漂う。財務のリスク耐性強化へ、アジアやデジタル分野などへの投資を加速し、顧客部門収益をさらに高める必要がある。
地域銀も有価証券ポートフォリオ見直しによる評価損益改善に資金利益拡大が加わり、4~9月期の単体コア業務純益(投資信託解約損益除く)合計は17%増の9千億円超と本業収益が堅調に推移。38行・Gが25年3月期の従来予想を上方修正した。
ただ、貸出金利の引き上げは競合上の理由などから濃淡があるようだ。金利以外の課題解決型ソリューション提案に磨きをかけるなど差別化が求められる。顧客接点のデジタルシフトに対応した店舗戦略や営業手法への転換も急がれよう。足元では小・零細企業の倒産が増え、与信コストの高まりも危惧される。好業績のうちに競争領域を確立すべく新しい事業モデル構築のスピードを上げてほしい。2024.11.22
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