社説 デジタル時代こそ差別化戦略を
全国銀行協会は10月31日、「よりよい銀行づくりのためのアンケート」報告書を公表した。一般生活者がどの銀行チャネルをよく利用しているかの調査では、有人窓口の利用頻度の低下が明らかになった。既存の金融機関には、利用者にとって便利なオンライン取引を充実させつつ、同時にインターネット専業銀行との差別化をどう図るかという戦略眼が求められている。
おおむね3年ごとに同様の調査をしている。銀行チャネルの利用頻度に関する調査では、半年に1回以上利用する人の割合がATMは90%、インターネットバンキングは55%、店舗窓口は41%だった。ネットバンキングと店舗窓口の利用率は、前回の2021年調査で初めて逆転し、今回の調査で差がさらに広がった。
金融機関は業態を問わずバンキングアプリの機能向上や使いやすさを高める開発を競っている。デジタル化による事務効率化の効果は大きい。昨年度までは日本銀行のマイナス金利政策の影響で金利収入が細り、不採算店舗の統廃合を進めるなかで顧客の利便性を保つ狙いもあった。マイナス金利が解除され、有人店舗の重要性に再び着目する動きもあるが、利用者視点に立てばわざわざ店頭に足を運ばなくても済むオンライン取引への移行は不可逆的だろう。
主に使う金融機関の満足度を尋ねた調査では、「満足している」の回答率が平均24%だったのに対し、ネット銀は40%と高かった。既存の金融機関にとっては、デジタル社会への移行が進むなかで対面サービスをどう位置づけるかが今後の課題となる。
有人店舗を維持しても、人手不足が常態化する環境下では人海戦術に頼った営業は望めない。言うまでもなく経営資源は有限である。自社の顧客層と採算性を考慮したうえで、対面での相談がなじむ業務に人員を集中投下し、それぞれの独自カラーを打ち出すことが「よりよい銀行づくり」につながるはずである。2024.11.29
ニッキンのお申し込み
ご購読のお申し込みは、インターネット・FAXで受付けしております。
申込用紙をFAX(03-3262-2838)またはお近くのニッキン支社・局までお送りください。