社説 株価に左右されにくい経営を
銀行等保有株式取得機構が3月末で株式の買い取り業務を終了する。不良債権問題が深刻だった2002年1月に設立され、銀行の持ち合い株式などの買い取りを行ってきた。片山さつき金融相は、機構の保有株式処分で相当の益が見込めることも踏まえ「総体的に意義あるプロジェクトだった」としたが、市場で取引されるべき株式を公的な機関が買い取る異例の措置を発動せざるを得なかった経緯を金融界は忘れてはならない。
株式買い取りスキームは01年4月の緊急経済対策に盛り込まれ、02年1月に施行された銀行等株式保有制限法に基づき機構が設立された。銀行が株式持ち合い解消のため、短期間で大量に株式を売却した場合、株価が急落し市場が著しく変動する恐れがあり、それを回避することが目的とされた。保有株式の下落による含み損拡大で自己資本が棄損(きそん)し、貸出を通じた資金供給の妨げになることが危惧されたことも大きい。
機構の主な業務である特別勘定での買い取り実績は25年12月までの累計で3兆6千億円余り。持ち合い解消に一定の効果はあったとはいえよう。ただ、06年にいったん停止した買い取りは、08年のリーマン・ショックを機に09年に再開され、11年の東日本大震災、コロナ禍などで延長されてきた。とりわけリーマン危機の際は、日経平均株価が一時7千円を割り込むなど株価が大きく下落し、株式保有が銀行経営を不安定化させたことは教訓だ。
15年のコーポレートガバナンス・コード導入、さらに18年の改訂で政策保有株の削減方針について説明が求められるようになり、持ち合い解消は加速している。株価上昇もあって、株式売却が利益を押し上げている面もあるが、株価に左右されにくい経営を目指していくべきだ。
経済の悪化(株価下落)と一緒に資金供給機能を低下させるようでは、金融機関の存在意義を問われる。2026.1.23
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