社説 個人国債優遇は慎重に進めよ
財務省と金融庁が、2027年度の税制改正要望で個人向け国債の税制優遇を求めた。事項要望とし、詳細は示していないが、少額投資非課税制度(NISA)の対象とする案などが取り沙汰されている。実現すれば、金融機関の預金だけでなく、地域への資金供給に影響を及ぼす可能性がある。政府・与党には慎重な検討を求めたい。
政府は骨太の方針に個人向け国債の魅力向上により、投資家層の拡大を図ると盛り込んだ。日本銀行が国債購入額を段階的に縮小していく中、国債を安定的に償還・発行し続ける施策は必要だ。23年に個人向け国債の発行を始めたイタリアは、相続税免除や金融商品の所得税率軽減などの優遇策を設け、個人の国債保有率が8%から14%台に高まっており、効果は見込める。
一方で個人国債を優遇すれば、恩恵を受けるのは金融資産の多い層に偏りかねない。NISA対象とした場合も税収減が見込まれる。極めてリスクの低い国債保有の税優遇は、貯蓄から投資への転換を促してきた政府方針と相いれない部分もある。
金融機関で最も懸念されるのが預金への影響だ。8月募集分の個人国債の金利は最も高い5年ものが2.06%(税引き前)。定期預金との金利差もあって人気を集めている。26年3月末の国債残高1013兆円のうち家計保有分は20兆円(2%)。家計の金融資産に占める割合も限られるが、金利差に税優遇が加われば、預金から国債への資金シフトが加速することは容易に想像される。
日銀がマイナス金利政策を解除して以降、預金獲得競争が激化し、預金が減少する金融機関もある。さらに個人国債へ資金が移れば、貸出に回せる資金が減ることになりかねない。対抗上、預金金利を引き上げることで収益が圧迫される恐れもある。政府・与党は、金融システムへの影響も踏まえ、多面的かつ丁寧に検討すべきだ。2026.9.4
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