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社説 4月20日号 マネロン対策の底上げ急げ

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   金融庁は金融機関に対し、マネーロンダリングとテロ資金供与対策の現状を再点検するように促している。2019年に金融活動作業部会(FATF)の第4次審査を控え、官民で対策のレベルアップを進めているなかで、問題事例も発生している。マネロン対策の不備は、日本の金融システム全般に対する国際的な信認を低下させる。各金融機関は、その点を踏まえて自らの体制を点検すると同時に、高度化を図ってもらいたい。
 金融庁は2月の地方銀行、第二地方銀行トップとの意見交換会で、直近で見つかった問題事例について言及した。顧客が複数回、窓口に多額の現金を持参し、生活口座として利用されてきた口座に入金したうえで、貸付金名目で海外法人に全額を送金したケースだ。
 犯罪収益移転防止法や外為法で規定されたチェックは行われていたものの、マネロンの疑いがある取引かの確認が十分ではなかったため、複数回にわたり多額の不自然な海外送金が見過ごされていたと、警鐘を鳴らした。併せて海外送金責任者への情報伝達遅れや資金移動状況を送金先銀行に確認するなどの情報収集がされていなかったことも問題視している。
 マネロン対策は法令上求められる最低限のチェックを形式的に行うだけでは不十分だ。送金を受け付ける窓口では、取引の合理性を見極め、少しでも欠く場合は一歩踏み込んだ対応が必要になる。また、経営陣がマネロン対策の重要性を認識し、組織的に対応できる体制を整備することも重要だ。担当者任せでは実効性は高まらない。
 窓口の感度を上げるには疑わしい取引や不適切事例の情報共有が欠かせない。金融庁には海外も含めて、できる限り具体的な事例を示して、情報の共有化を図ってもらいたい。数多くの事例を知っていれば、対応の幅は広がる。
 犯罪・テロ資金撲滅を通じ健全な社会の実現に貢献することは、金融機関に求められる不変の役割だ。FATFの審査で及第点をとることは重要だが、そこだけが目的になるのは、本末転倒だろう。2018.4.20


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