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社説 5月18日号 縮小時代の独禁法は議論必要

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 親和銀行を傘下に置くふくおかフィナンシャルグループと十八銀行が、経営統合実現へ長崎県内の貸出シェア引き下げにつながる取引先の借り換えサポートに乗り出すことを表明した。公正取引委員会が懸念する県内の競争環境維持に対応するためだ。統合計画発表から既に2年超が経過。公取委の判断はなお予断を許さないが、今回のケースをきっかけに、独占禁止法のあり方について幅広く議論していく必要性もあろう。

 独禁法の精神は、公正かつ自由な競争を守り、消費者の利益を確保することにある。十八、親和の両行が合併すれば県内貸出シェアは7割に達し、強力なライバルも見当たらなくなる。公取委が待ったをかけたことは自然だろう。一方で、銀行側が将来の人口減少などを踏まえて、統合を決断したことにも理はある。経営が弱体化し、金融仲介機能を果たせなくなれば、競争環境が弱まること以上に地元経済は打撃を受けかねない。

 競争環境の維持だけを考えれば、店舗譲渡や債権譲渡は避けられない。しかし、競争環境維持の先にある利用者の利益を守ることについては、事後的なチェックを強化することでも不可能ではない。望まない債権譲渡を強いられるなら、それこそ利用者の利益を損なう。

 両行グループは5月7日、利用者の不安や懸念を解消する具体的な措置も公表した。例えば、業績不振企業の貸し渋り懸念について相談窓口の設置や金融庁への報告で弊害防止に努めるとした。また、寡占の結果起き得る不当な貸出金利引き上げの防止策も明確にしており、相応の効果は期待できよう。

 金融庁の有識者会議はシェア重視の可否判断の見直しを求めている。金融業の特殊性はあるが、金融業界の言い分だけを通すのは無理がある。ただ、経済の縮小を前提とした独禁法のあり方については、目立った議論が行われていない。地域経済が縮小するなかで、金融業に限らず地域内シェアが高まる合併・統合計画が浮上する可能性もある。将来を見据えて、地域経済の発展に有効な法制度の議論を始めることが重要だ。2018.5.18


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