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3月2日号 大廃業時代の現実化許すな

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 中小企業の後継者難による大廃業時代の到来が危惧されている。危機感を強める政府は、2018年度の税制改正大綱に事業承継に伴う贈与税・相続税の納税猶予対象を全株式とし、猶予割合も現行の80%から100%に拡大する措置を盛り込んだ。金融界も足並みをそろえて、円滑な事業承継を手助けしてもらいたい。地域金融機関の場合、地元で廃業が増えれば、取引先数減少や雇用喪失により、自らの存在基盤を危うくする。
 経済産業省は現状を放置すれば、中小企業の廃業が急増、2025年ごろまでに約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われると推計している。また、帝国データバンクの17年調査によれば、後継者不在企業の割合は国内企業の3分の2に当たる66.5%に達し、年々その比率は上昇する傾向にある。金融機関は取引先に早めに問題意識を持ってもらえるように働きかけ、一緒に対策を検討していく必要がある。
 取引先の後継者育成支援は当然だが、それが困難な場合は先日、規制緩和された銀行本体による人材紹介などの提案も有効だろう。18年度税制改正大綱では中小企業等経営強化法を改正し、M&A(合併・買収)を活用して事業承継のための再編・統合を行う際、登録免許税・不動産取得税を軽減することが盛り込まれている。M&Aを活用し、事業を存続させ雇用を守っていくことも有力な選択肢だ。
 また、事業の魅力や将来性が薄れ、後継者が見つからないケースがある。金融機関には後継者がでてくるように事業再構築や成長を支援していく取り組みも期待される。
 中小企業白書2017によると小規模法人や個人事業者が事業承継について相談した先では顧問税理士や商工会・商工会議所に次いで金融機関が多い。事業引継ぎ支援センターなどより高い割合で、金融機関の課題解決支援能力が期待されている証しだ。商工会議所などと連携を強化し、地域経済を守る観点から、あらゆる手を講じ、しっかりと取引先の事業承継を支えてもらいたい。大廃業時代を現実化させてはならない。2018.3.2


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