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社説 遠藤長官のかじ取りに期待

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 金融庁長官に7月17日付で遠藤俊英監督局長(59)が昇格した。前身の金融監督庁発足から20年。検査局を廃止し、総合政策局、企画市場局を新設する大規模な組織再編も行われた。仮想通貨など新たな金融の手段が登場する一方で、地域金融機関の持続可能性低下が懸念され始めている。遠藤長官には、前任の森信親氏(61)が進めてきた改革路線を踏まえつつ、実体経済を支える金融の適切な役割発揮と、安心・便利な金融サービス実現につながる金融行政のかじ取りを期待したい。
 遠藤長官は3年間、監督局長を務め、精力的に地域金融機関のトップらと意見交換してきた。事情を熟知し、危機感も持っている。金融検査マニュアル廃止後の検査・監督の考え方に、「収益性が低下し、持続可能性に問題が生じれば、基準抵触前でも業務改善命令を出す」と盛り込んだのも、その表れだ。
 金融システム全体への影響を回避するためだろうが、そこに至る前に問題意識を共有し、改善を促すことが重要だ。金融機関が過度に保守的になり、適切な金融仲介機能が果たせない事態を招かないように慎重さも求められる。裁量行政への後戻りではなく、対話で納得感ある未来志向の行政を目指すべきだ。
 現在進められている機能別・横断的な金融法制への見直しは今後の金融機関のあり方に大きな影響を与える。多角的議論は必要だが、時間がかかり過ぎて、その間に隙間を縫うような業者が、規制が重い金融機関のビジネスを代替していくようでは不公平だ。一方で新たな参入者が不明瞭な法のため、参入を躊躇すれば、利用者が恩恵を受けられない可能性も生じる。
 長寿化が進むなかで、資産形成をどう後押ししていくかも課題だ。その一環で金融機関に顧客本位の業務運営を強く迫ってきたが、一部の対応が形式的になっている面がないとはしない。貯蓄から資産形成への流れを確かなものにするには、さらなる対話の充実が求められる。また、利用者利便向上や金融機関のイノベーション促進につながる規制緩和には、今後も前向きに取り組んでもらいたい。2018.7.20


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