社説 金融界発の決済・送金改革を
麻生太郎金融相が2月19日、銀行以外にも100万円を超える送金を解禁するための法整備を行う方針を示した。金融界にとっては、送金手数料の減収になる可能性がある。小口決済分野でも新興企業が相次ぎ参入し、銀行の三大業務とされてきた為替業務は浸食されつつある。指をくわえてみていれば、重要な安定収益源が細る。新規参入者と伍(ご)していくためには金融界発のイノベーションが求められる。口座情報を持つ強みを生かすなど、金融機関ならではの付加価値を付けた革新的サービスで利用者離れを防ぎたい。
2017年度に送金などで得た受入為替手数料は全国銀行ベースで6924億円。経常収益の4.2%を占める。5年前と比較すると都市銀行では増えているものの、地方銀行、第二地方銀行では減少している。低価格で決済・送金業務を手掛ける参入者が増えれば、減少に拍車がかかる恐れがある。10年に100万円を上限に送金業務は銀行以外にも解禁。個人の利用を中心に17年度には資金移動業者の取扱額が初めて1兆円を超えた。上限見直しで法人の利用増加も見込まれる。
厚生労働省を中心にデジタルマネーによる給与支払い解禁議論が進んでおり、19年中にも実現する。外国人労働者受け入れ拡大を見越した措置だが、金融界への影響が予想される。振り込みを利用する企業は手数料次第でデジタルマネーを選ぶ可能性がある。若い世代は抵抗なく受け入れるかもしれない。
全国銀行協会が18年7月に行ったアンケートによれば、銀行以外の新しい決済サービスを「利用したい」としたのは19%。18~29歳に限れば33%に高まる。ただ、この世代でも「利用したくない」が39%で上回った。理由は「セキュリティー不安」にある。裏返せば銀行のサービスは高い信頼を得ているということだ。その強みをベースにコスト面を含め新たな決済・送金サービスの開発が必要だ。米国や北欧では有力銀行が手を組み、新サービスを生み出し、普及した例もある。個別の経営判断とはいえ、金融界が協力すれば普及させやすいメリットはある。2019.3.1
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